うちの村には5頭のロバがいる。
4頭は大人で1頭は子ども。
ロバの役割は、水の運搬。
それ以外に彼らに仕事はない、よって雨季には週休七日が採用されて日々草を喰み、うろうろしてフェンスを壊しては家族に疎まれている。
別にその辺の草を食べて、その辺で寝て、また食べてを繰り返しているだけなので飼育しているとは言い難い。
野良のロバとの違いは特にない。
しかし、乾季になれば水の運搬が待っている。
今まで毎日休んでいたのに、急に毎日仕事が始まる。
ロマ曰く
「毎日荷物を運んでいるロバは足腰も強くて、ちゃんと人の言うこと聞くけど…見てあれ」
目線の先には、タンクを載せるための牛皮で出来た入れ物を背に載せられて振り落としているロバの姿。
嫌だ!働きたくない!!
と言わんばかりに鼻を鳴らしている。
ギリシャやモロッコを旅した時に出会ったロバは、重たい荷物を載せて山の斜面や急な階段を黙々と歩いていた。
時には「タクシー乗ってく?」と声を掛けてくるおっちゃんが連れているのはロバだった。
「ロバ?タクシー?」
「そう、ベルベルタクシー」
モロッコのベルベル人にとっては、ロバはタクシーにもなるらしい。
使役動物とはいえ、大変だなあと思っていたがうちの村のロバたちは半ニートだ。
「うちのロバは揃いも揃って賢くないから、近所の賢いロバに頼んで種付けしてもらって生まれたのがあの子どもだよ。」
あの子が賢く育つことを祈ろう。
しかし、ロバも馬鹿ではない。
妹たちの言うことはまあ聞くが、私の言うことなど一切聞かない。
彼らも分かっているのだ
「コイツなんも分かってないぞ!」
私の前で荒ぶるロバも、妹やママの前ではおとなしい。
今日もフェンスを突破して、うちの庭に侵入してくるロバを追い出すのが私の仕事。