数日前からローズ(妹①)の調子が悪い。
食欲がなく、ずっとお腹が痛いというので村の診療所に行ってみた。
症状を告げると、看護師さんが「尿路感染やね。」とメモを書いてロマに渡す。
ロマはその紙を持って薬局に行き、薬を買ってきた。
抗生剤を注射され帰宅。
村の診療所では採血も出来ないし(検査出来ないから)、レントゲンもエコーもない。
私が体調不良でかかった時は、ドクターが問診してバイタル測ってから治療してくれた。
ローズの場合はドクターは現れず、問診もバイタルチェックもなしにいきなり投薬されたので心底驚いた。
そして、その症状は多分尿路感染じゃないよーと心の中で思いながら家路についた。
もちろん翌日もローズの調子は変わらず、今度は薬局に行った。
薬局で症状を話して薬を貰って帰宅。
抗生剤と痛み止めが入った袋を見ながら、こりゃ埒があかんと思った。
ロマに言うと「大きな病院に行って検査してもらおう。」と隣町のそのまた隣町の病院まで行く事になった。
まずバイクに3人乗って隣町で一泊、翌朝タクシーを使ってさらに隣町へ。
タクシーの運転手さんが飛ばす飛ばす。制限50kmの道路を体がちょっと浮くぐらい飛ばすので速度計を見ると140Kmだった。
見通しのいい道路だが、対向車も来るし人も歩いているし、家畜だって歩いている。
何にもぶつからず無事に着きますように…。
車はスピードを保ったまま無事に隣町に着いた。
私も車酔いしやすいが、滅多に車に乗らないローズは体調不良の上に車酔いで病院に着く頃はぐったりしていた。
私ももちろん酔って気持ち悪さと闘いながら病院の門をくぐった。
市街地から離れて、赤土のオフロードを数十分走ったところにポツンと建っている病院。
平日で人はまばらで受付後すぐに診察室に呼ばれた。
中に入ると若い女性のドクターが「ようこそ、どうぞ掛けてください。」と診察が始まった。
丁寧に問診して、電子カルテに診療内容を打ち込んでいく。
ドクターがカタカタと診察記録とオーダーを打ち込んでいくのを見た私はそっちに興味津々だった。
ザンジバルは紙カルテと電子カルテの併用型で、紙カルテにバイタルやその日の経過、治療計画が記されていて、薬剤や検査オーダーのみ電子カルテが活用されていた。
こんな山の手にある病院で、電子カルテが導入されていることに驚きつつ、スッキリした見た目で使いやすそうだなーどこの国が開発したやつなんだろうと思っているうちに問診が終わった。
腹部エコー検査に行くように言われ、ローズと一緒に検査室に入ると男性が待っていた。
技師さんなのかドクターなのかわからないが、とても丁寧に説明しながらエコー画像を見せてくれた。
そのエコー画像を持って、もう一度さっきのドクターの部屋に戻ると診断を告げられた。
「消化管潰瘍です。投薬と食生活に気をつけてもらう事になります。」
ドクターはローズにスワヒリ語で薬の飲み方と、食事で気をつける事を説明してくれた。
とりあえず投薬を続けて、1ヶ月後に再診の予約を取って今日の診察は終わった。
診察室を出る時に、私がローズにマサイ語で話しかけたのを聞いたドクターが
「あら、マサイ語が話せるの?」
とびっくりして私を見た。
長いセンテンスでは話せないが、単語を組み合わせて短い二語分くらいは話せるようになってきた。
「ナイトワナニ?(お名前は?)」
ドクターがスワヒリ語で私の名前を聞いたので
「ナイトワタタ(名前はタタです。)」
と返事すると、スワヒリ語も話せるのね!と喜んでくれた。
実際には話せるというレベルではないが、タンザニアの人たちはちょっとでもスワヒリ語を話すと「凄い凄い、えらいねえ!」と喜んでくれる。
発音が日本語と似ているスワヒリ語、もっと頑張ろうと診察室で思った。
薬局で大量の薬を貰って、病院を後にする。
診察中に雨が降ったので赤土の道路は水たまりだらけだ。
帰りのタクシーはゆっくりで、疲れた私たちはうとうとしながら町に戻る。
隣町に帰ってきた時にはすでに夕方4時、そして小豆くらいの雨粒が空から容赦なく降ってくる。ワイパーがいくら仕事をしても前が見えない。
家に帰るのを早々に諦めて、もう一泊することにした。ローズの調子が早く良くなりますように。
雨の音を聞きながら目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。
病院の入り口