メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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ポチの仕事

夜中3時、けたたましく吠える犬の鳴き声で目が覚めた。

ロマが外の様子を伺いに棒と懐中電灯を持って出ていく。

 


うちの村には4頭の犬がいる。

ポチ(雄犬)とママオルクチ(雌犬)、そしてママオルクチが産んだ7匹中2匹の子犬が今はうちの村の番犬だ。

本当はママオルクチは他所の村の犬だったんだけど、1月にうちの村で出産してから居着いて今に至る。

 


いつもはちっとも吠えず、村の住人を噛むこともなくとても大人しい犬達だが、夜中の侵入者には容赦ない。

家畜を狙って闇夜に紛れてやってくる野生動物や、牛泥棒には歯茎を剥き出しにして威嚇する。

今晩は随分と長い間吠えていたので少し心配になったが、10分後にロマが戻ってきたのでほっとした。

 


ロマは眉間に皺を寄せて怒っていた。

「もうポチにご飯あげなくていいから。」

 


ロマが家から出てきたのを見て、ママオルクチは吠えるのをやめてロマの所に走ってきた。

何かの居る方向に向かってけたたましく吠えてロマに居場所を示したあと、そっちの方向に向かって走って行って更に吠えた。

ママオルクチの後を追うように、子犬2匹もキャンキャン吠えながら走っていく。

ロマが吠えているその先に着いた頃には、もう何の形跡もなかったので追うのをやめて、牛の様子に異変がなかったので帰ってきた。

 


ロマは思った

「ママオルクチと子犬だけしか見てないけど、ポチどこ行ったんやろ?」

うちの敷地に戻ってきて、生垣を見るとポチがいた。

尻尾を丸めて草葉の陰に隠れていたのだ。

ママオルクチが勇敢に侵入者を追い払っているその時に、ポチは何もしないどころか隠れていた。

「ポチ!雄犬としての矜持はどこへ行ったんや?!産後のママオルクチに働かせてどーする!!」

 


こうしてロマの怒りを買い、我が家ではご飯を貰えなくなったポチ。

元々うちの犬じゃないから、他の家でご飯貰ってるし丸々してるからご飯あげなくてもいいなあと同意して、ママオルクチにだけご飯をあげることにした。

 


その数日後、知らない雄犬がうちの村にやってきた。

ママオルクチは吠えて威嚇したが、ポチは一瞬でお腹を見せて服従のポーズをとっている。

丁度朝のミーティング中で、バブ(おじいちゃん)ビビ(おばあちゃん)、叔父さん達みんながいる目の前でポチがそんなことしたもんだから、みんなから「ポチは犬じゃないね。なんか、他の生物だと思う。」と酷評されることになった。

 


ここが日本なら、可愛いだけで存在意義があるのだがこの村に居る犬猫はペットではない。

犬は番犬、猫は鼠取りとそれぞれに役割がある。

今日も朝から叔父さんの足に飛びついて怒られているポチ。

ポチがちゃんと番犬として働けるように躾たいけど、私にも喜んで飛びかかってくる。

村の人に危害を加えないだけ良いのかも?生暖かい目でポチを見ると、嬉しそうに舌を出して尻尾を振っている。

1匹くらいポチみたいな犬が居ても良いのかもしれない。

そのあとビビにも飛びついて怒られているポチを見ながら、元気が一番、そのままのポチで居て欲しいと思うのだった。

 

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茶色がポチ。この後すぐに服従していた。