メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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母の日

久しぶりに雲が晴れて太陽が見えた。

今日こそはと、しばらく溜まっていた洗濯物をせっせと洗い庭に干しているとロマがやってきた。

「いつも洗濯してくれてありがとう。」

私が洗濯や掃除をしていると、必ずそうやって声をかけてくれる。

 


マサイ村では女性は家事、男性は家畜に世話とはっきり役割分担が決まっているので私が洗濯をするのは当然の事なのだが、ロマはいつも声に出して労ってくれるので気持ちよく家事ができる。

なんなら時々手伝ってくれる。

「男性の仕事じゃないから、いいよ。」

「妻を手伝うのに理由がいるの?」

ないです、ありがとう。

 


夕方になり洗濯物もパリッと乾いて、お日様の匂いがする服を取り込んでいた時に、そういえば今日は母の日だなと思い出した。

「今日は母の日だよ。」

「え!今日なの?日本のお母さんに連絡しなきゃ。」

6時間時差のある日本とタンザニア、きっと母はもう寝ているだろう。

「じゃあビデオ撮って送ろうよ。お母さんありがとうって。」

お母さん、いつもありがとう。というビデオを撮ったのだが、「つ」の発音が難しいらしく「す」に置き換わってしまう。

何度か撮り直したビデオは、送信しようと思ったら電波がなかった。

また明日、電波を探して送ろう。

 


牛たちが放牧から帰ってきて、ママたちが乳搾りにやってきた。

「今日は母の日だよ。」

ロマが言うとママ達は首を傾げている。

「母の日って何するの?」

マサイ村のママ達は母の日というイベントを知らないので、みんな頭の上に「?」が浮かんでいる。

「ママに感謝を伝える日だよ。」

「そんな日があるんやねぇ。」

「日本ではお母さんにお花を送ったりするんだよ。」

するとビビ(おばあちゃん)が言った。

「じゃあニャマ(お肉)が欲しいわ。」

花よりニャマ。

確かにここら辺でお花屋さん見た事ないし、花を飾る習慣もないのでママが貰って一番嬉しいものはニャマなのかもしれない。

 


時刻はもう午後7時になろうとしている。

ロマがどこかに電話している。

「家族全員分のニャマ頼んだから!」

程なくして、バイクタクシーが袋いっぱいのニャマを運んできた。

「ジェニファー(妹④)各家庭の鍋貰って来て。」

ロマとコイカイ(叔父さん)がお肉を切り分けて、鍋に入れていく。

鍋に切り分けたお肉を、まずママフィリのお家に届けてもらった。

帰ってきたジェニファーにロマが聞く。

「ちゃんとハッピーマザーズデイって言った?」

「言ってない。」

「それじゃ何でお肉が届いたか分からないでしょ、言ってきて。」

「わかった!」

 


そうしてママカカ、マママヌ、ママネイマ+ビビ、そしてうちのママに感謝を伝えてお肉を渡した。

みんないきなり鍋いっぱいの肉を渡されてキョトンとしていたが、母の日だよ!と伝えると喜んで受け取ってくれた。

 


配り終わって家に戻ると、ロマがまな板に乗せた肉を持って庭に出てきた。

「母の日だからね、ママオルクチ(犬)にもあげなきゃ。」

ママオルクチと子犬2匹、ポチも匂いを嗅ぎつけて庭に集まっている。

ママオルクチに優先してお肉をあげると、尻尾を千切れんばかりにブンブン振ってお肉を食べている。

そのあとに子犬2匹とポチにもおこぼれをあげた。

滅多に食べられないお肉に大興奮のオルクチ。

 


残ったお肉を私とローズ(妹①)で調理した。

ロマとコイカイもお肉を食べてお腹いっぱい。

マサイ村の母の日は村中にお肉の匂いを漂わせて美味しく過ぎていった。

 

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