メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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出会いと別れ

先週の水曜日、ママオルクチの子犬が1匹亡くなった。

1月に7匹で生まれた子犬のうち、5匹はよその村に貰われて行って、2匹だけうちの村に残った子犬。

7匹みんな綿毛みたいにコロコロしていて、全員大きく育つか心配していた。

やっとここまで大きくなって一安心かと思いきや亡くなってしまった。

 

そして残されたもう1匹のジェシー

昨日の夜からなんだか元気がなかったが、今朝になって家の前で荒い呼吸をしているのを見つけた。

そこから30分、ジェシーは短い生涯を終えた。

雨の降る寒い水曜日の朝、兄弟を追いかけて行ってしまった。

 

雨が降ったり止んだりを繰り返す中、ジェシーとの短い思い出を振り返ってぼんやりしていた。

最近は「ジェシー」と呼ぶと尻尾を振って来てくれるようになったところだった。

マサイ村に来てから、たくさんの動物が亡くなるのを見てきた。

牛も羊もヤギもニワトリも、当たり前に大きくなるわけじゃ無いことを痛感した。

 

雨が止んで晴れ間が広がってきた午後1時、妹達がロマを呼びにきた。

「もうすぐ産まれそう」

1月か2月に叔父さんから買い取った牛は妊娠していて、いよいよ今日産まれそうだという。

産気付いた牛は放牧には出さず、村に置いておく。

放牧中に森の中で産まれると後々ややこしいからだ。現に数日前、放牧中に森で出産した牛は高齢で、出産後立って歩けなくなって連れて帰るのに難儀した。

 

この牛は初産で、最初の破水から随分時間が経っていた。

子牛の足がチラリと見えるが、出てくる様子はない。

破水から時間が経てば経つほど子牛の命は危うくなる、せっかくここまで育ったのだから生きてこの世界に出て来てほしい。

ロマとママ、妹達が分娩介助に入る。

牛を横倒しにして、子牛を引っ張り出すのだ。

村に残っているママ全員を呼んで来ての総力戦、男性は放牧や他の仕事で居ないのでロマ1人。

後ろ足を紐で縛って動けないように引っ張るのに2人、牛の顔と角を押さえて上半身の動きを封じるのに2人、牛のお腹を押して子どもを押し出すのに1人、産道を広げるのに1人、残り全員で子牛の足を引っ張る。

ロマは子牛の足を引っ張る係でママ達と協力して引っ張るがなかなか出ない。

そこに、バブ(おじいちゃん)の家を建てている大工さんが様子を見に来た。

「良いところに!一緒に手伝って!」

ここで男性の力は大きい、大工さんの筋肉隆々の腕が光る。

引っ張っている足の間から子牛の鼻先が見えて来た、顔が出ればもうすぐ!頑張れ!!

ついに頭が全部出たところから5秒で体も全部出た。

産まれた!大丈夫かな?

子牛に水を掛けて叩いて刺激しながら、母牛の口元に持っていく。

母牛はすぐに立ち上がって子牛を舐め始めた。

どうやら大丈夫そうだ、良かった。

朝はあんなに雨が降っていたのが嘘のように、雲の間から温かい光が差し込んでいた。

 

草場に移った親子は日の光を浴びながら寄り添っている。

朝亡くなったジェシーを思いながら、産まれて来た子牛を眺める。

この子牛だって無事に大きくなる保証はない、私にできることは祈ることぐらいだ。

白いママから産まれて来た白い子牛。

どうか元気に大きく育ちますように。