メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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反面教師

マーケットに買い出しに行った時の話。

ママは不在で、妹達も忙しかったのでビビ(おばあちゃん)と一緒にマーケットに行った。

 


すると、マーケットの入り口で誰かが私を呼んでいる。

「ムズング!ムズング!(外国人)」

振り返ると中年の太った白人女性が立っていた、スーザンだ。

「こんにちは、調子どうですか?」

「ええ、良いわよ。今日はママと一緒じゃないのね?」

隣にいるビビが引き攣った笑顔でスーザンを見ている。

他のビビが私の前を通ったので、マサイ式の挨拶をした。

頭を下げて、ビビが私の頭に手を置いて挨拶を交わすのだ。

それを見たスーザンが言った

「あなた本当にマサイに馴染んでるわね。私は怖くて無理。彼らから皮膚病うつされそうで怖いもの、だからマサイの挨拶はしないって決めてるの。」

そう言うとマサイの夫と一緒に雑踏に消えていった。

 


一瞬、聞き間違えたかと思って反芻したが、やっぱり合ってるよな。

もやーっとした気持ちで家に帰り、次の日にロマに話した。

「あのさー昨日スーザンに会ったんだよね。」

ことの顛末を話すとロマがウンザリした顔で続けた。

「そういうとこだよ、近所のマサイが彼女を嫌うのは。」

「何が不思議って、マサイのことそう思ってるのに夫はマサイって矛盾してない?」

「あの夫婦がどういう関係なのかは分からないけど、事実としてスーザンはマサイを利用してお金稼いでるからね。」

「どういう事?」

 


どうやらスーザンは、マサイの子ども達の写真を撮って母国であるヨーロッパの国から募金を得ているらしい。

そして写真の被写体になった子どもの家族にはお礼としてお米1Kg、砂糖1Kg、豆1Kg、石鹸1個がひと月に1回支給される。

お金にすると1000円弱くらいだ、ちなみに我が家では砂糖1Kgは2日で無くなるしお米1Kgは1回で消える。

そして支援してくれる人の中には子ども達宛に手紙を送ってくれる人がいるけれど、本人の所に着く頃には開封された後があるという。

 


「それってスーザンが搾取してるって事?」

「いくら募金があったかとか、誰も知らないから分からないんだよ。その物品支給する時もキャンキャン喚きながら『私のおかげで支援してもらえるのよ!感謝しなさい!!』って人前で叫んでる。なるべく関わりたくないのが本音だけど、一回話してみないとあかんなぁ。」

そりゃみんな関わりたくないやろ。出来たら私も挨拶だけにしたい。

募金活動とかクラファンって、誠実にやってる人が大半だと思うけど、稀に中抜きする人も居るから信用されないんだな。

「彼女の夫が何で一緒にいるかは知らないけど、スーザンは明らかにマサイ、黒人を見下してるのは態度でわかるよね。」

態度っていうか、口から出ちゃってますけど…思っててもそれ私に言う必要あるんか?

多分、私のこと(アジア人)も下に見てそうなタイプだ。

 


その話の流れで、ザンジバル島で働いていた時の話になった。

「ホテルやレストランでお客さんの荷物が無くなった時、どうなると思う?」

「みんなで探す、とか?」

「ミーティングに呼ばれる、黒人だけ。ホテルには他にもムズング(外国人)が働いてるけど、チーフが黒人だけ集めて『お客さんの荷物無くなったの、心当たりある人?』って聞かれるの。」

「え?でもタンザニアは黒人の国やん?逆差別されるって事?」

「黒人は貧乏で、いつも人の物盗ろうとしてるって思われてるからそういうミーティングになるんだよね〜ムズングのスタッフは前提として『そんな事しない。』って決めつけてるから呼ばれもしないよ。」

タンザニア国内でタンザニア人が差別されるって何じゃそりゃ?

「働いてたホテルのオーナーはとっても良い人でね、イタリア人だったんだけどよく一緒にチャパティ半分こして食べたり、彼女の息子達とクリスマスお祝いしたりして楽しかったんだ。オーナーは肌の色じゃなくて、スタッフを対等に見てた。どの国、どの人種でも人によるよね。」

 


そうだなあ、本当に人による。

色々世界を旅して色んな人に出会って、良い人も悪い人もいた。人種や国籍で括れるものじゃなかった。

世界を旅して価値観は変わったか?と聞かれることがあるけれど、自分の中の無意識バイアスを変えていく良い方法だったのかもしれない。

こうして時々、人の振り見て我が振り直せ。

ああはなるまい、反面教師を見つけた水曜日。