メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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井戸掘り始めました〜マサイ村水プロジェクト〜

ついに井戸掘りが始まった。

1ヶ月間、海外送金に翻弄されてああでもないこうでもないと試行錯誤の後、Wiseで送金する事に成功した。

時間はかかったが、色々トライする事に意味があったと思う事にする。

 


お金が用意できたところで、前回水源調査に来てもらった業者に依頼した。

朝8時半、村の入り口から大きな作業車がクラクションを鳴らしながら現れた。

牛の横を通り過ぎて、目的のポイントに作業車を停める。その後ろからもう一台、同じ大きさの作業車が追いかけてくる。

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村のみんなには井戸掘りの事を言ってなかったので、クラクションを聞いて何事かと村中の人が集まってきた。

今は試験が終わって学校が休みで、子ども達もみんな家に居て遠巻きに何が始まるか見ている。

元々、外で朝のミーティングをしていたバブ(おじいちゃん)と叔父さんはいち早く作業ポイントまでやって来て、大きな作業車を眺めては感嘆の声をあげている。

「アイヤイヤイヤイヤ…アイヤイヤイヤイヤ…」

バブが私に向かって歩いてくる。

「タタ、アッシェ、アッシェナレン。(ありがとう、ありがとう)」

大きな手で私の手を取り、何度もありがとうを言うバブ。

叔父さんもやって来て、「タタ、おめでとう。」と言ってくれた。

肝心のロマは用事で不在だ。

 


前回の水源調査をした時に、叔父さんだけは私たちが何をしようとしているか知っていた。

あれから4ヶ月、ようやく井戸掘りが実現した事を嬉しく思う。

しかし、この時点ではまだ私は嬉しさ半分、不安も半分だった。

果たして水は出るのか?塩水ではないか?真水だとして飲料水に適しているのか?などなど考え出すとキリがない。

クラウドファンディングで日本のみんなの力を借りてやっとここまで来たんだから、後は飲める水が出る事を祈るしかない。

みんなが笑顔で見守る中、私は眉間に皺を寄せて工事を見ていた。

 


作業車を固定し、いよいよ地面を掘るための機械を垂直に立てる。

大きい、思ってたよりずっと大きい。お台場で見たガンダムくらい大きい。

ドリルガイドを取り付けて、いざ地面を掘っていく。

爆音と共にドリルが地面に沈んでいく、ある程度進むと長さを付け足す長い筒を加えてさらに深く掘り進める。

まるでジオフロントに侵入する第五使徒ラミエルのようだ。

少しずつ、掘削機の横に砂が積み上がっていく。

その砂を取って、少し離れた木の下に並べて地層のサンプルが増えていく。

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作業開始から1時間、10時には60mまで掘削した。

ここで掘った穴の中にドリルより一回り太いドリルスリーブを挿入し、さらに奥まで掘っていく。

どんどん増える砂のサンプルを眺めていると、手のひらより大きいケニョンガ(カメレオン)がノソノソとこっちに向かって歩いてくる。

久しぶりに見たケニョンガ、もしかして12月に見た個体が大きくなったのか?

周りを気にする事なくノソノソと地面を歩き、砂のサンプルを横目に木に登って行った。

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時刻は12時、ケニョンガの姿が見えなくなった頃、何やら砂ではないものが地面から噴き出している。

井戸掘り業者のマネージャー2人が私を見てサムズアップしている。

水だ。ついに水が出た!

140m地点で水源に当たったようだ。

砂のサンプルも水が混じって泥のようになっている。

さらに掘る進め、水の量も増えて地上に小さな川を作り始めた。

ママがやって来て、迷わずその水をすくって口に含む。

「ちょっと塩が入ってる。」

どうやら塩水のようだ。

真水が出るまで更に掘り進める。

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ふと後ろを見ると、近所のマサイが2人来て作業を見ている。

さらにバブの弟と、近所の長老もやって来て井戸掘りを眺めていた。

ここに井戸が出来れば、近所の村もここに汲みに来ることが出来る。

どうか飲める水が出ますように。

ここでようやくロマも村に帰って来て、一緒に作業を見ることとなった。

14時、地面から湧き上がる水は川を作って流れ始めた。

16時、最後の一本の筒を取り付け掘削。

16時半、ついに最後の掘削が終わった。

近所のジグアの子ども達も様子を見に来ている。

 


みんなが見守る中、ドリルを引き上げると掘削機の高さまで噴水のように水が上がる。

朝はどんよりした曇り空だったのが、この時には晴れて太陽の光が差していた。

地中から噴水のように噴き出る水と太陽の光が交差して虹が掛かり、みんなが喜んでいる顔を見ることが出来てほっとした。

マネージャーとロマが何やら話している、どうやら飲める水のようだ。


マネージャーに呼ばれて私たちは掘削機の近くまで行って写真を撮る事にした。

良かったなぁとぼんやりしていると、プシュっという音と共に上から大量の水が降って来た。

何が起こったか分からず逃げ遅れた私はびしょ濡れになって、それを見た子ども達がケラケラ笑っている。

私は何も作業をしてないのに、すごく肩に力が入っていた事に気がついた。

思えばこの半年間、寝ても覚めても水の事を考えていた。

遠巻きにママ達も嬉しそうに見ている。

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朝9時から始まった作業は、すべての筒を回収して代わりにパイプを設置して蓋をするまで実に9時間かかった。

18時、作業終了まで休憩もなく働き続けた作業員の人たちにお礼を言って、彼らが帰って行ったと入れ違いに牛が帰って来た。

 


そして、マネージャーから請求書を渡され目ん玉が落ちそうになった。

掘削は265m、どうやら地盤が硬く作業時間も長かったようで予想の1.5倍くらいの金額がそこに記されていた。

合計32,080,000シリング(1,753,000円)

事前にアドバンスとして12,000,000シリング(656,000円)払っていたので、残りを払わなければならない。

 


掘ってしまったものは仕方ない、払うしかない。

水が出た喜びを考えれば…!

今日はこれで終わりだが、これからポンプ設置とジェネレータ、ソーラーパネル、貯水タンクの工事が待っている。

その分のコストは別なので、果たして合計いくらになるのか?!

まだまだ工事は続く!!