土曜日の朝、私は目が覚めて部屋の中を見渡した。
いつもロマが寝ているベッドは空っぽで、カーテンの隙間から朝日が射している。
どうやら昨日の出来事は夢ではないようだ。
仕事に行く支度をして、一応ロマにメールを送ってみるが既読にならない。
朝日を浴びて汗だくになりながら駅に向かう。
平日だろうが休日だろうが関係なく観光客で溢れかえっている電車に揺られて職場に到着。
土曜日の仕事は半日勤務なので、勤務が終わってすぐに病院に向かう。
休日の病院はガランとしていて、昨日お世話になった救急外来も人はまばらだった。
病棟で面会の手続きをして病室に入ると、ロマがベッドに座って笑顔で元気に話しかけてくれた。
私を認識して笑顔を向けてくれるだけでホッとして力が抜けた。
「昨日ここに来た時ってどんな感じだったの?」
「ここの救急外来にタクシーで来てね、たくさん検査してこの病室に入院したんだよ。」
「来たことだけは覚えてるんだけど、検査したか覚えてないなあ。」
意思疎通はややゆっくりだが、昨日に比べればうんと良くなっている。
昨日何があったか確かめられるくらいにはしっかりしていて、スマホを触って溜まったメールを読んだりTikTokを見たりする余裕も出てきた。
よかった、きっとすぐ良くなって退院できる。
「元気そうになってよかったよ、また明日来るからね。」そう言って16時に病室を後にした。
家について、遅いお昼ご飯を食べてお風呂に入ったら緊張の糸が切れて気絶した。
ヴーヴーヴーヴー
スマホの振動音で目が覚めた、時刻は22時51分、知らない電話番号だった。
「◯◯病院、脳卒中内科病棟です。旦那様の衣類が汚れてしまったのでレンタルパジャマ使わせてもらってもよろしいでしょうか?」
病院からの電話だった。
「すみません、よろしくお願いします。」
電話を切った後に部屋に静寂が満ちる。
日本に来てから、ずっとロマと一緒だったから一人になるのは久しぶりだ。
ロマは病院でどうしてるんだろう。
23時半、また病院から電話がかかってきた。
嫌な予感しかしない。
「興奮状態で静止が効かないので、すぐに病院に来てください。」
後ろで大勢の足音が聞こえる。
二つ返事で電話を切り、財布と家の鍵を持って大通りに飛び出してタクシーをひろう。
病院まで15分、一体ロマに何が起きているのか?
タクシーを降りて、ちっとも秋を感じない熱風を身に受けながら病院玄関をくぐり抜け、病棟に向かう。
心臓がバクバクしている、誰もいない暗い廊下にかかっている時計を見るともう日が変わろうとしていた。
次回、入院2日目【ロマが結婚指輪を外す】