昼間の結婚式が終わった16時頃から記憶を失い、起きたら18時だった。
ママやロマは夜の結婚式に備えて準備に大忙し。花嫁は爆睡。
みんな私が疲れてるから、起こさずに寝かしておいてくれた模様。
アッシェナレン(マサイ語でありがとう)。
起きて外に出ると何やら騒がしい。
人だかりが出来ている場所に行くと、牛の出産真っ最中。
1時間かかって、夜の帳が下りる頃、いきなり仔牛がこの世に出て来た。
結婚式の日に生まれてきた仔牛よ、すくすく育ちますように。
夜8時、結婚式夜の部開始。
まずは私が少女から女性になるための儀式。
(前提からして私は少女ではないんだけれども、そこは目をつぶっていきましょう。)
家族や親せき、近所の女の子たちと最後の食事を共にすることで少女時代に決別して大人の女性になるこの儀式。
マサイの女の子たちは本当にシャイで、私と顔を合わせてご飯を食べることもできないくらい恥ずかしそうに下を向いててとっても可愛らしかった。
ロマが「ちゃんと食べてる?」と聞きに来たもんだから、女の子たちはますます黙ってしまった。
炊き込みご飯に羊の肉を載せた豪華な食事をお腹いっぱい食べたら眠たくなってしまった。昼寝もしたのに襲い掛かる強烈な睡魔。
少し時間があったので部屋に戻ってベッドで横になっていると何やら歌が聞こえてくる。
マサイの結婚式夜の部は、マサイの戦士「モラン」と少女たちによるダンスパーティーなのだ。
戦士と少女たちの歌声が遠くから聞こえる、ウトウトしながらその声を聴いていると、その音はどんどん家に向かって近づいてくる。
地鳴りのような戦士の声と、美しい少女の歌声。
いよいよその声の輪郭がはっきりしてきたので、外に出てみる。
家の門の外を覗くと大勢のマサイ戦士と少女が歌いながら隊列を組んで庭に入ってくるところだった。
この迫力に眠気は吹き飛び、ワクワクと興奮で身震いした。
戦士が先に入ってきて一列に並び、そのあとに少女たちが対面するように一列に並ぶ。
お互いに歌を歌いながら、ダンスパーティーの始まりだ。
少女が2人、少しずつ前に出て肩を揺らして踊る。それを何度も繰り返して戦士と少女の距離を縮めて最後には円形になっていく。
義理の妹たちも肩を揺らしてダンスに参加している、それを見ていつかこの子たちもお嫁に行くのかと思うと寂しくなってしまった。
自分の結婚式で妹たちの将来を想像して寂しくなるなんて、それはもう親である。
今ここに私の親も親戚も一人も参加してないけれど、両親に結婚式を見せてあげたかったなと思う。
熱気を帯びた夜の空気、私もモニカ(妹)に促されてダンスの輪に入る。
低音の戦士の掛け声と高音の少女の歌声が交じり合う輪の真ん中で肩を揺らして踊る。
ママが作ってくれたドレスの飾りが揺れ、ネックレスや帽子の飾りもシャラシャラと音を立てて揺れる。ロマも楽しそうに私が踊る姿を見ている。
幻想的な夜は更けていき、私は0時になる頃にすべての力を出し切りHP/MPともに0となり宴が終わる前に先に寝てしまった。
こうして長かった1日が終わり、ロマと私は泥のように眠りに落ち、翌日は寝坊したのだった。
マサイの伝統的な結婚式を体験できたこと、この誇り高き美しい民族の一員になれたことを本当に嬉しく思う。
家族にしてくれて、本当にありがとう。