メイタタのしもべ日記

タンザニアに住むマサイの夫と遠距離中の看護師

マサイ結婚式

マサイ村での結婚式当日、朝6時に起床。

前日まで降ったり止んだりしていた空模様も何処へやら、快晴である。

 

朝日を浴びて、ママや妹たちと挨拶を交わす。

おばあちゃんたちが手伝ってくれて、ウェディングドレスが最後の仕上げに入った。

その隣で、今から続々とやってくる参列者の人たちに振舞うチャイを大鍋で作る。

小さめのボールいっぱいに生姜が積まれていて、これが全部入るのか〜と眺めていた。

 

ロマは男の人たちだけで森の中のキッチンで料理を作り始めている。

ヤギと羊を1匹ずつ、結婚式のために捌いていく。

ヤギが私の前でメェェと鳴いている。結婚式のメインディッシュ、絶対美味しくいただくから…!とヤギと羊に別れを告げて母屋に戻る。

マサイの戦士(モラン)は女の人が見た肉を食べられないので、こうやって男の人だけで料理をするのだ。

 

さて、母屋では大量のチャイと大量のマンダジ(揚げパン)が用意されている。

近所の人も手伝いに来てくれて、どんどん人が増えていく。

10時、私の衣装もできてママが着付けてくれた。

ジャラジャラのアクセサリーをこれでもかと言うほど重ねて、花嫁衣装が完成した。

ロマが私を呼びに来て「アメイジング!」と喜んだのも束の間、「早く早く」と牛の囲いの方にスタスタ歩いていく。

着いていくと、囲いの中で何やらもう始まっている。おじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さん妹たち、司教(?)さんが何か聖書を片手にお祈りしている。

よくわからないがロマの後ろを着いて歩く、地面は牛の堆肥で泥々していて思うように進まない。

ロマの叔父さんコイカイが私のスマホでビデオ撮影してくれているが、堆肥のせいで長靴を履いて撮影してくれている。ありがとうコイカイ!

15分ぐらいのお祈りの後に、叔父さんたちがバケツの水に葉っぱを浸してその水を撒きながら祝福の言葉をかけていく。牛にもヤギにも私たちにも水を掛けながらぐるっと一周回る。

水と共にお祈りの言葉を掛けられるたびに、こちらは「ナイ!」と返事をする。

水飛沫がキラキラ飛び散り、牛たちはモウモウ鳴き、私はうんこだらけの足元を眺めながら「家族の一員になるんだなぁ」と感慨に耽っていた。

 

牛たちとの儀式は終わり、母屋の庭に戻ると第二幕が開始された。

聖書を片手に何やらお説教が始まった。

これがまた長くて、1時間くらいずっと喋り続けている。いつまで続くんだろう…

ロマに「今って、プログラムでいうと何番目なの?」

「今2番目だよ、8番まであるよ。」

軽く絶望。

この日は快晴でとにかく暑かった。

軽い頭痛とめまいがする、熱中症の初期症状だ。

部屋に戻ってベットに横たわってると、ママが来て「タタ!大丈夫なの?!」

と私の手足と頭を水で冷やしてくれた。

結婚式で熱中症、まさかの事態にちょっと笑ってしまう。

その後、体調は持ち直して再度外へ。

私がいないうちにプログラムは進んだようである。

よかった…!もっと巻きでお願いします!!

 

何やら遠くから大勢の歌声が聞こえてくる。それはどんどん近づいてくる。

庭の外に出ると近所の人たちが隊列を組んで歌いながら祝福に来てくれたのだ。

歓声と共に近所の人たちが庭に入ってくる。私も踊りに参加して、言葉こそわからないけど祝われていることはよく分かった。

ひとしきり踊った後、再度お説教。

やっとプログラムも半ばを越え、いよいよクライマックスを迎えた。

 


もう一度、みんなで庭の外に出て、朝イチに見た葉っぱを右手にお祝いの歓声を上げながら庭に入っていく。

私の右にはロマ、左にはママ。私たちを囲むように近所の人たちとゆっくり庭に入る。

すると庭の奥にテーブルと椅子が設置されていて、長老、おばあちゃん、お父さんが向こう側に座って待っている。

ママも途中で離れて向こうの席に座った。

 


私の右隣にはロマ、左には親戚の女性、ロマの右には親戚の男性。

席に着くよう促されて座った瞬間、感情が込み上がってきた。

「快く私を家族に迎えてくれて、ありがとう。」

と思って横を見ると、ロマも感極まっている。

「感動して、泣きそうなんだけど!」

ママを見るとママも涙ぐんでいる。

素敵な家族の一員になれて、嬉しいなあ。

 


そしていよいよ式のクライマックス、日本でいうところの「誓いのキス」みたいな重要ポイントが訪れた。

長老たちが、私とロマに牛乳を振りかけるのだ。

祝福の言葉と共に、キブユという容れ物に入れた牛乳を何度も振りかける。

「ナイ!」

牛乳ピシャ!!

ここだけの話、私は牛乳の匂いが嫌いで小学生の時は給食の牛乳をどう処分するかに心血を注いでいた。大人になって、飲めるけど出来れば飲みたくない飲み物となった。

そして今、嫌いな牛乳を頭から振り掛けられている。

しかし、先にマサイの戦士と結婚した日本人のしおりちゃん曰く、長老たちが口に含んだ牛乳を一斉に吹きかけられたと言っていた。

それを思えば、振りかけられるくらい可愛いものだ。

長老たちの祝福の儀式が終わり、立ち上がってみんなと抱擁をかわす。

おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、叔父さん、叔母さん、近所の人。

牛乳まみれの私とロマはそのまま家の中に入ってベッドに腰を掛ける。

 

ようやく長かった儀式(昼の部)が終わり、昼食にありつけたのは15時。

結局、忙しくて私とロマはご飯をほとんど食べられなかった。

それでも来てくれた人たちが嬉しそうにしているのを見られてとても幸せだった。

マサイの結婚式は夜の部もあるので、ロマは夜の支度に取り掛かっていたが私は眠たくて眠たくて寝てしまった。

 

次回、結婚式夜の部~マサイダンスを習得せよ~。

 

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