近所の割烹料理屋の前に小さな池がある。
7年前この街に引っ越してきた時は、小さな赤い金魚が数匹泳いでいた。
近くを通るたびに、金魚の成長を観察してきた。夏の暑い日も、氷の張る寒い日も、金魚たちがすくすく育っていくのを眺めていた。
金魚って結構大きくなるんだなあ、カラスや猫の襲撃もなく数が減ることもなく今日まで元気に暮らしているのを微笑ましく見ていた。
もはや、飼い主の気持ちで金魚の様子を観察していたある日。
1匹も金魚が居なくなっていた。
外敵の攻撃にあったのか、誰かに連れて行かれたのか、はたまたお店の中に移されたのか。とにかく金魚が居なくなっていて、空っぽの池が苔をむして整然と佇んでいる。
本当にどこに行ってしまったのか。居なくなって気づく自分の中に占める金魚の割合。
近所のお店の金魚でこんなに喪失感を感じるのであれば、うちのめいこ(猫)が居なくなったら自分はどうなってしまうのか…。勝手に想像して想像で咽び泣く飼い主を横目に、めいこはあくびをしている。
守りたい、そのあくび。どうか猫又になるくらい長生きしますように。
あと、消えた金魚もどこかで元気にしてますように。