メイタタのしもべ日記

タンザニアに住むマサイの夫と遠距離中の看護師

人の話を最後まで聞く

私は説明書を読まない。

 

そのため、電子レンジも洗濯機もほとんどの機能は使われないまま宝の持ち腐れである。

6年前にセゾンのポイント交換でうちにやってきた電子レンジ、9割の確率で「あたため」しか押したことがない。いっぱいスイッチがあるのに、選ばれるのはいつもあたためとスタート。

洗濯機も電源とスタートが8割、あとは洗濯槽洗い。Agとかなんやらモードとか、今後も触ることは無いだろう。

 

説明書もそうだが、もれなく人の話も聞いていない。目を見て、良いタイミングでうなづいて、まるで真摯に話を聞いているような雰囲気を醸し出すのは得意だが何も頭に入ってこない。

 

高校生の時、水泳部のマネージャーをしていた。3年生の夏に顧問の先生がプールサイドに来て言った。

「プールの水を調整するのに、開栓作業をしている。プールサイドのマンホールの蓋を開きっぱなしにしてあるから気をつけるように。特にタタ。」

 

名指しである。

Y先生は知っていたのだ、普段私が何にも話を聞いていないことを。先生の目を見て、うなづいて、何も聞いていない事を。

「先生、分かってますよ。大丈夫でーすー」

と先生に手を振りながらプールサイドを走っていき、そのマンホールに落ちた。

注意を受けてから落ちるまで約10秒。なんなら「大丈夫でーすー」の「すー」くらいは落下しながら発した言葉だった。

 

人生で初めてマンホールに落ちた歴史的瞬間を多くの部員と顧問の先生の目の前で華々しく披露してしまった。

幸い、水道バルブの上に落っこちた衝撃で足をざっくり切ったくらいで済んだ。

やっとの思いで地上に這い出したと思ったら、鬼の形相の先生とその後ろでプールサイドに倒れて笑い転げている同期のマネージャー、大笑いしている後輩たちの姿が見えた。

 

懇々と先生に説教され、部員たちには「あんな綺麗なコントできる?手振りながらマンホール落ちるって!」

同期のマネージャーは笑い泣きしながら「タタちゃん、いきなり消えてェヴッホ!!ドリフか新喜劇みたいな綺麗な落ち方でェッハゥ!!!」と絶賛してくれた。

そして足を負傷したので寮まで副顧問の先生に送ってもらった。

「ちゃんと人の言うこと、最後まで聞いて理解せなあかんで。」と念押しされた。

 

そんな事があって、なるべく人の話や説明は最後まで聞こうと思うのだが今日も後入れのスープを先に入れてしまった。三つ子の魂百までも。

気をつけます。