マサイ村で滞在していたある日、ロマに「近くの集落で結婚式があって、夜にお祝いに行くんだけど一緒に行かない?」と誘われた。
マサイのドレスを着て、ママにいつもより派手なネックレスを着けてもらい歩くたびにシャラシャラと音を鳴らしながらロマに見てもらうと「ちゃんとブラジャーした?ちゃんとブラジャー着けてね。」と釘をさされた。普段、マサイのドレスを着るときはノーブラで快適に過ごしていたし、ママも妹たちもノーブラ文化である。
今までそんなこと言われたことなかったのに?と不思議に思っていると、どうやらお祝いにはモラン(戦士)と呼ばれる世代の若い男性がたくさん集うので、ほかの男性の前で私の洗濯板のような胸が脇から見えないか心配してくれているようだ。
マサイのドレスは一枚布を体に巻き付けて着るので、どうしても右脇のガードは緩い。集落で居るときは周りは女性かロマしかいないし気にしていなかったのだけど、確かに若い男性に見られるのは気恥ずかしい。大人しく従うことにした。
昼間に結婚式は済んでおり、夜は男女に分かれて伝統の踊りを踊ってお祝いするらしい。夜10時、会場に着くとすでに大勢のマサイが男女に分かれて並んでいる。観光用ではない、彼らの祝いの儀式に突如現れたアジア人。
ものすごく視線を感じる。それもそのはず、このあたり一帯には4人のムズング(白人)が住んでいるがアジア人は住んでいないからだ。観光地でもない村に、アジア人が突如現れたら好奇の目で見られて当然である。
うちの村(紀伊半島の山奥)にマサイ族来たら、みんなもっと見ると思うもんなあ…
一人の女の子が私の手を取って、一緒に行こうと言ってくれた。よくよく見ると、ロマの親戚の子で一度会ったことのある子だった。男女別に分かれて並ぶので、ここでロマとは別れて女の子と一緒にお祝いのダンスを見ていた。
女性は伝統的な衣装に、銀色の丸くて薄い飾りのついた帽子とネックレスを纏い、肩を揺らしてシャラシャラと音を奏でていく。男性の一定のリズムに乗せたビートに、女性が節をつけて歌う。なんとも幻想的な空間、美しいな~と見ていたら「次、行くわよ!」と手を引かれて輪の中に入る。
誰かが懐中電灯で私たちを照らす、女の子は上手に肩を揺らしてシャラシャラ鳴らしているが、私はクネクネとタコのようなモーションで明らかにみんなとは違う動きをしている!でも楽しい!!
私の変なダンスはロマによって撮影され、私のスマホに記録された。
それを見た私は真面目なので、「今度はもっと上手にできるよう練習する」と肩を揺らす練習を後日始めたら、「ダンスは練習するもんじゃないよ」とみんなに笑われた。そうなの?フリースタイルでいいの?でももう少し肩の可動域広げたいんだけど!(真面目)
結局その日は0時過ぎに先に帰ることになったので、みんなが何時までお祝いしていたか分からない。
貴重な体験をさせてもらい、みんな仲良くしてくれて楽しい一晩になった。
やっぱり次回はもっと肩を揺らしたいと、今晩も一人で練習に励むのであった。