マサイ村に着いた翌日。
ロマのおじいちゃん(長老)に呼ばれて、御宅に伺うことになった。
長老宅に着くと、椅子に掛けるよう勧められビビ(おばあちゃん)の隣に座らせてもらった。敷地内にある家は同じような造りになっていて、土壁と藁で出来た屋根の家が大半で入ってすぐがダイニング、左右に寝室とカマドのあるキッチンという間取りが多かった。ドアは基本的に開けっ放しなので、虫はもちろん鶏、ヤギの子どもなんかも入ってくる。ヤギの子どもが丸くなって寝ているのを、しばらく猫だと思っていたので鳴き声に驚いた。
長老と第一夫人、ロマと私の4人で一緒にジュースを飲む会が開催された。歓迎会みたいなものだろうか。
コカコーラとファンタみたいなジュースが準備され、全員がそろったところでジュースを開けて乾杯するのかな?と思っていたら何かお祈りが始まった。マサイ語なので、何を言っているのか分からなかったが、後にロマに聞くと私たち2人の健康と未来を祝福してのお祈りだったらしい。
これが結構長い、おじいちゃんとおばあちゃんは各々違った文言を唱えているようだった。途中からロマも参加したので、私は黙って儀式の様子を眺めていた。
まさか自分がマサイ村にツーリストではなく、彼女として来ることになろうとは1年前の自分は想像もしていなかった。
その昔、友だちが「タタは世界中どこでも生きていけそうやな~アフリカの奥地で原住民に囲まれて暮らしてそうやもん。」と言っていたが、今まさにその状況。友だちは預言者だったのか?!電気も水道もガスもない村で、毎晩蚊に刺されながらも楽しく生きてます。
さて、お祈りが終わってジュースを飲むのかな?と思いきや最後の仕上げがあった。
「タタ、手のひらを上にして差し出して。」
ロマの言う通り、ロマの手のひらの対面に私の手のひらを出した。
「ぺっぺっぺ」
?!
長老が私たちの手のひらに唾を吐きかけている。続いておばあちゃんも。
「その手で胸を撫でて」
はい、唾の付いたその手で素直に胸を撫でた。そしてらもう一回同じことを繰り返し。
「顔全体を撫でて」
正直に言うと、これはさすがに抵抗があった。なるべく粘膜に入らないよう顔を撫でまわし一連の儀式は終了。あとはコカ・コーラを美味しくいただいた。
衝撃的だったので、これに何の意味があるのかロマに聞きそびれたが似たような光景は見たことがあったのでこれはまだ序の口なのだろう。
マサイの伝統奥深し。
キッチン。カマドで調理します。