メイタタのしもべ日記

タンザニアに住むマサイの夫と遠距離中の看護師

マサイ村滞在記⑥牛が一番大事

マサイ村の一日は夜明けとともに牛の世話から始まる。

夜のうちは牛を柵の中に入れて、外敵から守りつつ脱走を防いで、朝になったら柵から出して広場でしばらくリラックスタイム。

仔牛はお母さんにひっついておっぱいを飲んでいる。その横でモニカ(4番目の妹)が別の牛の乳しぼりに勤しんでいる。びゅーっびゅーっと勢いよく乳が出て入れ物にどんどん溜まっていく。試しに私もやってみたが1滴しか出なかった。

 

日中牛たちは放牧されて、草を食んで夕方に帰ってくる。

時々脱走する牛も居て、近所の農作物を食い荒らすなどの被害が出るので放牧も楽ではない。先日もロマは脱走した牛を探して1日つぶれたらしい。しかもトウモロコシ畑2個分食い荒らしたのでマサイ会議が行われたんだとか。どんな会議だったのか気になるところ、対策はあるのだろうか?

「I'm very tired because of crazy cow!!(めっちゃ疲れた、アホな牛のせい!)」

とお疲れの様子だった。

 

牛の世話は男性の仕事なので、小さなマサイから長老まで集落の男性がみんな集まって牛の様子を見る。一頭一頭の顔を覚えていて、牝牛には名前を付けて牡牛は名無しらしい。

ロマのお気に入りの牛を見せてもらったけれど5秒でどれかわからなくなった。

 

朝の様子を見て、調子の悪い牛が居れば捕まえて治療をする。

牛用の注射器と薬剤を携えて、ロマのお父さんが牛の頸静脈に注射を打ち周りのマサイたちは牛を素手で取り押さえている。

人間の注射と同じ要領で、まず静脈を抑えて怒張させ針を刺し逆血確認(静脈に針が入っているかの確認)をしてから薬剤を注入する。牛はピクリとも動かず立っている。

一人のマサイが解説してくれた。

「ここのリンパ節腫れてるのわかる?左右差あるでしょ。それに体温高いから病気なんだよ。」

動物のお医者さん!!(牛専門)

 

ほどなくして解放された牛は群れの中に戻っていった。

小さなマサイたちが木の棒片手に牛を追う。まだ未就学児くらいの子どもたちでも牛の扱いに慣れていて、たくさんの牛を誘導して集落の外へ出る。こうやって小さなころから牛とともに暮らし、切っても切り離せない関係を築いていく。

 

私の帰国が近くなり、ロマは私と一緒に撮った写真を「SNSのアイコンにするよ!」と言っていた。

帰国後、彼のアイコンを見るとそこには私ではなく牛が映っていた。

牛が一番大事!!

 

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