アパートに落ち着く事が出来て一安心。
近くのレストランでご飯を食べて、夕方からロマはマサイミーティングに行ってくると出て行った。
終わったら戻ってくるつもりだったけれど、ミーティングが思いのほか長引いたので友達の家に泊まると連絡が来たのは日付が変わる頃だった。
翌日、日が高く昇る頃に帰って来て調子が悪いと言う。ここ数日胃の調子が悪く、昨夜は夕食に食べたものを戻してしまったというので胃薬を飲ませて様子を見ていた。
しばらくすると、ロマの体調がずいぶん良くなったので買い出しに行くことになった。
近所の小さな売店で野菜とパスタ、調味料を買う。
「お肉も買いたい。」
「お肉屋さん、ここからちょっと遠いから買いに行くよ。アパートで待ってて。」
私は玉ねぎを剥いて、ニンニクと一緒に炒めて下準備をしていた。
ロマがなかなか帰ってこない。もう30分以上経つのにどうしたんだろう?
スマホが鳴った。何だか嫌な予感がする。
メッセージが届いている。
「アクシデントにあった、今病院に向かってる。タクシーで来て。」
短い文章に詰まった切迫感に私も気分が悪くなった。すぐに大通りに出てタクシーをつかまえて病院に向かう。20分ほどで病院に到着し、職員に救急外来は何処か尋ねると連れて行ってくれた。
たくさんある処置室の一室を覗くとロマが処置を受けていた。右下半身の擦過傷が目立つ。
生食洗浄されて唸っている、お尻に注射打たれていたので鎮静剤でも筋注されたのだろう。
とりあえず意識はハッキリしているし、私のことも認識出来ている。呼吸状態著変なし、頭は打ってないという。
処置がひと段落して、看護師さんが出て行ったのでことの詳細を聞いてみる。お肉を買いに ボダボダ(バイクタクシー)に乗っていたら、乗用車がフルスピードで突っ込んできてバイクも車も大破したらしい。
えー高エネルギー外傷やん!
「レントゲン撮った?」
「撮ってない」
「エコーした?」
「してない」
???
いや、まて落ち着け。
ここはタンザニアやし、医療のやり方も違うんだろう。と自分を納得させようと思ったが、先生のカルテ(紙切れ)を見るとバイタル(血圧、脈拍など)すら取られていない。項目はあるが数値は白紙だ。
えーーーーそんなことある?!?!?!
看護業界の隅っこで働いてましたけど、バイタル測らんで良い事なんて18年間無かったよ?!
ましてや外傷。流石にこれは全世界共通だと思いたい!!
傷の処置が終わり、医師のカルテに書いてある薬が処方されそのまま帰宅。そう、帰宅。
日本だったら即入院です。
抗生剤と痛み止めの処方をもらってアパートに帰宅。
もうね、文化の違いなのか医療の違いなのかわからんけど私は不安で不安でこの日何回「Are you ok?」を繰り返したことか。
私の不安をよそに、ロマはYouTubeでコメディ見て笑ってるし。どゆこと?
そうは言っても、受傷から24時間も経ってないし夜は痛くて眠れない様で起きていた彼。
「ごめんね、お肉なんて頼まなかったら良かったよ。」
「いいよ、タタが事故に遭わなくて良かったよ。」
ロマのことは物理攻撃以外、今後も守っていこうと思った瞬間であった。
病院の救急外来。