ついにウフルピークに到達した私たち。
時刻は朝7時28分。写真を撮ったり景色を眺めて感慨にふけったあとは下山。
たいした登山経験もないのだが、下りは大の苦手。
膝が自分の体重をうまく捌ききれない、きっと重心のかけ方が下手なんだろう。
すぐに膝が笑いはじめる。
ウフルピークからステラポイントに戻る途中、同じ日程同じルートで登っていた別の男性パーティーに出会った。
彼は高山病の症状が強く出たため、思ったよりも時間がかかったそうだ。
「でも、登山は競争じゃないんだしゆっくりでいいんじゃないですか?」
「僕の職業は、山登りのタイムアタックなんだよね。今まで色んな山登ってきて、ここより高い山もいったことあるんだけど今回は辛かったな。」
プロでも高山病には勝てない。
私は今回運よく症状があまり出なかったから登れたのだ、ラッキーな人間である。
ギルマンズポイントに戻って下を見る。
こんなところよく登れたな、と思うような道のり。
サミットへの登頂が真夜中なのは2つ理由がある。
1、太陽光を避けるため。(体力温存)
2、ルートが目に見えたら「これを登るのは無理」と心理的にきついから。
確かにこの道のりが見えてたら途中で諦めていたかもしれない。
砂利道を滑るように下っていく。
靴が砂利に埋もれて歩くというか、雪道を滑りながら降りるイメージ。
下っている途中に、キボハットで同室だったフランシスコとすれ違った。
彼は出発が4時だったので朝日が燦燦と照り付けるなか、ガイドと2人で登っていた。
「登れたのかい?」
「はい、頂上まで行けました。」
「そりゃあガイドが2人も付いてたらいけるよね、僕は1人しかガイドいないからどうかな。」
だったらお金出してもう一人雇ったらいいのでは…?
キボハットに11時に戻り3時間仮眠をとった。
そうしているうちにフランシスコも帰ってきた。どうやらバテてギルマンズポイントで引き返したらしい。
チップについて聞かれたので、ブログで見た金額を彼に伝えると
「はあ?会社から給料もらってるやろ。10ユーロくらいで十分や。」
…じゃあ聞くな!
一応、参考までに私はガイドに30ドル/日払った。
10ユーロじゃ全然足りない、彼についていたガイドさんこき使われて10ユーロじゃあんまりだ。
14時にキボハットを出発して、ホロンボハットを目指す。
ガイドのハミシにフランシスコの愚痴を聞いてもらった。
「ああいうガイドやチームにリスペクトがない人間は嫌いだよ。」
「知ってた。フランシスコのガイドが『あの女の子、彼のこと嫌いだね。僕と喋るときと全然表情が違う』って教えてくれたから。それに見てたらわかるよ。」
そんな露骨に態度に出ていたのか…知らぬはフランシスコだけちゃうか?
17時半にやっとホロンボハットに着いた。
なにやら山火事が起きていて、あたりはレンジャーの人たちでごった返していた。
長い一日が終わり、私は夕食後すぐに泥のように眠った。