3日目、朝8時にホロンボハットを出発。
ゼブラロックを経由して最終キャンプのキボハットを目指す。
その距離9㎞、高度は1000m上がる。高地順応のためにホロンボハットに2泊するコースもあるらしいけれど、ガイドのハミシが私の状態を見て1泊で出発することになった。
キリマンジャロと言えば、の写真でよく見る風景が目の前に広がる。
初日に見たジャングルはどこにもなく、準砂漠地帯となり低木と草が生えている。
その先に見えるキリマンジャロの頂は果てしなく遠く見える。本当にあそこにたどり着けるのだろうか?
そもそも普段山登りをしない私がアフリカ最高峰のキリマンジャロに登ろうと思ったのは、世界一周中に出会った同い年の男の子が「登れるけん。」と言ったのがきっかけ。
帰国した後、一緒に働いていた同い年の女の子も「私も登ったけん、行けるよ。」。
2人とも同い年で、旅行が好きで私と共通項が多かった。その2人が登れるって言うと説得力があって「あぁ、登れるんだ。」と単純に思い込んで今に至る。
思い込みのパワーって凄い。
雲がほとんどない晴天、日差しが強く歩いていると暑いが止まると風が冷たい。
もう富士山より高い場所を歩いているのだ。息苦しさはないが、爪を見ると真っ白になっていて酸素化が悪くなっているのが分かる。
ポレポレと言いながらゆっくり進む。私の荷物を運ぶポーターのエリナは高山病の症状が出始めていた。
頭痛と吐き気、何度登っていても高山病の危険からは逃れられない。
あんなに重たい荷物を持って、それだけでもしんどいのにいつも笑顔をみせてくれるエリナ。
幸い私はまだ高山病の症状が出ず、体は元気だった。
13時45分、キボハット(4720m)到着。
ここが最終キャンプ地、今から仮眠をとって18時に夕食。さらに仮眠をとって日付が変わる0時にサミットに向かって出発する。
ここまでは登山というよりハイキングだったけれど、目の前に聳え立つ山は想像以上に辛いんだろうなと想像する。ガイドのハミシとアシスタントガイドのジョセフも高山病の症状で頭痛と胃痛に悩まされていた。私はそれより便秘に悩まされていて、お腹が張ってそのせいでご飯があまり食べられなかった。
ハミシが「それ全部食べるまで見てるから。」と夕食を完食するよう言うけれど、入らんものは入らんのだ。
夕方ウトウトしていると同室者のフランス人男性フランシスコが入ってきた。
またこの人がやかましい上にパーソナルスペース0、おまけにガイドさんに横柄な態度をとるという私の嫌いなことを物の数分で3タテしてくれた。
キリマンジャロに登頂するにはガイドやコック、ポーターの力あってこそだと思うのだが、彼は自信満々で「もっと高い山も登ったし、規則さえなければ一人で登れるよ。」と言っていた。
とりあえず寝袋に潜り込んで深夜を待つ。空気が薄いせいか、なかなか寝付けない。
眠れずに寝返りを打っているうちに深夜になり、ハミシとジョセフが部屋に来て何を持っていくか、何を着ていくか選定してくれた。
上はインナーを2枚と長袖のカットソー、薄手のパーカー、ウルトラライトダウンに分厚いジャケットと目出し帽にニット帽。下はスパッツ2枚、シャカシャカパンツの上からもう一枚パンツをはいて砂が入らないように砂除けのカバーをつけた。
スティックを持って、荷物はまたベースキャンプに戻ってくるので最低限に選別。
薬と日焼け止めにリップクリーム、水と行動食。
ドアを開けると吐く息が白い。
真っ暗な中、ヘッドライトの明かりを頼りに頂上を目指して出発した。