水曜日は村でマーケットが開かれる。
ここで1週間分の食料を確保するのが女性の仕事。
お昼を食べて、そろそろ行かないといけない時間になってきた。
「今日マーケットあるの?」
「あるよ」
「ローズ行くの?」
「まだ本調子じゃないから行かないよ。」
「誰が行くの?」
「…。」
ママはまだ病院から帰ってきていない、ビビ(おばあちゃん)もママに付き添っている、行くとしたらモニカ(妹③)か?
行かないと1週間分の食料が無くなって、毎日ウガリを食べる生活が待っている。
それは私には無理だ。
ならば行くしかない!
「私とモニカでマーケット行って買い物してくるよ!」
雨が降り出しそうな黒い空、早く行って帰ってこねば。
いつもならバイクタクシーを呼んで乗っていくけど、電話はママが持っているのでバイクタクシーを呼ぶことができない。
「バイクタクシー呼べないよ!どうするの?」
「歩いていくよ。」
「えーーー遠いよ?!」
「大丈夫大丈夫!」
こうしてモニカと私は家から歩いてマーケットまで行く事になった。
折り畳み傘とカッパをリュックに詰めていざ行かん。
曇り空だけど蒸し暑い、汗をかきながら普段はバイクで通っている畦道を歩く。
モニカは慣れた様子でスタスタと歩いていく、後ろからひょこひょこ着いて行くと道ゆく人たちが珍しそうに私たちを見ている。
中には「ムズングーーー!(外国人)」と手を振ってくれる子どもたちもいる。
40分ほど歩いてようやくマーケットに到着、ここからが本番。
買い物リストは頭の中、ニンジン、キャベツ、トマト、玉ねぎ、ナス、ジャガイモ、ピーマン、バナナ、葉物野菜、砂糖、石鹸、洗濯洗剤。
マーケットの中で美味しそうな野菜を探して、「シンガピ?(いくら)」を繰り返しどんどん買い進めていく。
早くしないと雨が降ってきてしまう、モニカにキャベツを買おうと言うと「重いものは後で」と至極真っ当な返事をもらった。
15歳、しっかりしてるなぁ。
野菜は欲しい分だけ言って、袋に詰めてもらう。
日持ちするジャガイモなどは少し多めに、痛みやすいトマトなんかはちょうどいい塩梅に買っておかないと、冷蔵庫がないのですぐに傷んでしまう。
砂糖は量り売り、天秤に寸胴を載せて量ってくれる。
これ以外に、末っ子のパンツとローズのピアスを一緒に購入。
それでも全部で25000シリング(1600円)だった。キャベツ1玉60円、日本では考えられないくらい安い。
買ってる途中で雨が降り出したが、そんなに強い雨にならず助かった。
重たい荷物があるので、帰りはバイクタクシーで帰ることにした。
モニカと私とドライバーの3人乗りで、荷物をわんさか担いでゆっくり安全運転で帰っていた。
畦道に入り、凸凹道も雨で濡れて所々ぬかるんでいる。
あっと思った瞬間、前輪が泥に取られてゆっくりと倒れて行くのがスローモーションで再生されていく。
ドライバーが足をついて踏ん張ろうとするけれど、その足元もぬかるみで滑ってバイクは斜めに倒れていく。
モニカは素早くバイクから降りて無傷だった。
「ドスっ」
私は荷物を抱えたまま鈍臭く膝から崩れ落ちて泥まみれになった。
「…。」
「…。」
無言で見つめあう私とモニカ。
「あははははははははっははは!!!!!」
モニカが見たことないくらい笑い出した。
つられて私も笑った。
ドライバーは居た堪れない感じで私たちを見ている。
もうすぐ家だったので、バイクタクシーをそこで降りてお金を払った。
本当は2000シリングだけど、モニカが「家まで着いてないし転けて危なかったやん!」と1500シリングに交渉してくれた。
家までの5分間、私たちは大笑いしながら帰った。
家の玄関でローズが待っていてくれて、私たちがケタケタ笑ってるのを不思議そうに眺めていた。
こうして初めてのおつかいは無事に終了、1週間分の食料は無事確保できた。
私とモニカの大冒険は大成功に終わった。

60円のキャベツを日本から持ってきた「ののじ」で千切りに。