ある日エマがうちに来て言った。
「タター、ワウー△꒳˙੭ु⁾⁾┐⭐︎「ε_ヾΦ 」
わかるのは私の名前を呼んでいる事とビビ(おばあちゃん)に関する何かだという事。
(ワウはマサイ語でおばあちゃん)
これはもう連想ゲームだ。
ビビがわざわざエマをうちに寄越した意味を考えねば。
ビビが私に頼みたい事、もしかして毛抜き?
彼女は逆まつげなので、日本製のシャープな毛抜きを貸して欲しいと来たことがあった。
エマに「ンゴ(どうぞ)」と毛抜きを渡すと
「タタ、アッシェ(ありがと)」
と戻って行ったので正解らしい。
ママや妹たちといる時も、9割は分かっていないが残り1割は知ってる単語と人の名前、場所の名前から話の内容を推測する。
「ソコニ(マーケット)」「マトゥンダ(果物)」
などのキーワードから、ああ今日のマーケットで果物買ったのかなとか
「ロマ」「エンゲイジュ(足)」「エメ(痛い)」
ロマの足の火傷の話だなとか。
毎日が連想ゲーム。
それでも最初に比べれば、ずいぶん連想の精度は上がった。
語彙数が少し増えたことと、生活パターンが分かってきたからだ。
しかし、ミスも多い。
昼下がりにフィリ(ロマの異母兄弟)が家に来た。
「タタ、ロマ マフタ。」
マフタは油のことだ。
油???ロマがなぜ油を必要としているのか??
何か料理でもしたいのか?
頭にはてなをいっぱい浮かべながら、フィリに1Lの料理油を手渡した。
数分後、フィリが1Lの油を持って帰ってきた。
「タタ、マフタ」
と言いながら腕に塗る仕草をした。
「そっちのオイルかー!」
連想失敗。
皮膚の乾燥を防ぐためのオイルが欲しかったのだ。
やはり疑問に思った時は失敗するのだと実感。
多分フィリも「コレあってるのかな?」と思っていただろう。
フィリに皮膚に塗る用の油を渡して、もう一回ロマに届けてもらった。
その後に、マヌのママに出会って何か話しかけられたけど一単語も分からなかった。
分からない時の私の反応は「エー」を繰り返し多用する。
マサイ語のエーは相槌で、話の合間に使う。
英語の「アーハン」みたいなものだろうか。
エーを連発する私を見て、マヌのママも「あ、タタちっとも分かっとらんな。」と察して「サワサワ(OK)」と言って去っていった。
せめて一単語でもわかれば、一か八か連想ゲーム出来たのに。
語彙力を増やしていこうと思い直した一日。
ソコニ(マーケット)