メイタタのしもべ日記

タンザニア出身マサイの夫と日本人妻の日常

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在宅治療〜マサイ村バージョン〜

マサイ村に帰ってきてすぐ、ロマが体調を崩した。

クリスマスシーズンで診療所が混んでいたので、家にドクターが来てくれることになった。

 

2日くらい食欲がなく、ほとんど食べられていなかったので脱水補正に点滴をする事になった。

ドクターがなんやらかんやらロマと家族に説明している。

どうやら500ml点滴2本いくようだ。

ドクターがキョロキョロと上を見ている、点滴を吊るす場所を探しているようだ。

天井の梁に紐でも掛けてS字フックで吊ったらいいかなと思った次の瞬間。

ママが五寸釘を持って現れた。

まさか…まさか?!

止める間もなく、ベッドの頭上、点滴を吊るすのに良さそうな所に打ち込んでいく。

 

あぁーーー新築の壁に!釘!

ママが釘をナタの柄で打ち込んでいく。

するとロマが、「それじゃ打ちにくいやろ」とばかりにルング(マサイの持ってる投げる武器)を手渡すではないか!

息のあった親子プレーを目の前に、私はただ見ていることしか出来なかった。

打った釘に点滴を吊るしてみて、ドクターが頷いている。

 

すかさず、ママが2本目の釘を隣に打つ。

えーーー掛け替えたらいいのでは?!?!?!

もうガンガン打っちゃってる、丑の刻参り並にためらいはない。

そりゃそうだ、大事な一人息子の一大事なんだから新築の壁に穴が空くことなど大したことではないのだ。

 

見事に点滴スタンドが出来、ドクターが点滴の準備を始めた。

点滴にルートを繋ぎ、ロマの腕を見て血管を選定している。

「なんか縛るもんない?」

駆血帯がないようだ。

「これでいけますか?」

ロマの腕を私の両手で締めて駆血する。

「OK!」

どうやら血管が決まったらしい、翼状針を取り出してそのまま刺した。

 

消毒は???

 

看護師になって20年、消毒なしに針を刺したのはこれが初めてだったので衝撃的だった。

そして、点滴液が満たってないルート。

私がルートの端まで液を満たしてドクターに渡して繋いだ後「これ終わったら2本目に変えて、終わったら抜針で!」と去っていった。

私は壁に打ち込まれた2本の釘を見ながら、眠っているロマが早く良くなるよう祈った。

 

翌日、ロマは回復してご飯を食べるようになった。

ただの補液で良くなるって、一体病名は何だったのか…治ったからいっか。

翌月、自分も村の診療所で治療を受けることになるとはこの時はつゆほども知らなかった。

 

【次回】発熱!下痢!腰痛!火傷の四つ巴。初めての夜間診療はいかに?マラリアチェック初体験。

 

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