メイタタのしもべ日記

タンザニアのマサイ村に嫁いだ日本人の日常

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誕生日

先日、42歳の誕生日を迎えた。

これまでずっと遠距離だった私たちは誕生日を一緒に過ごしたことがない。

ロマと出会ってから初めて一緒に誕生を過ごす事になった。

 

前日の夜も遅くまで仕事をして、明け方に帰って来たロマは朝になってもスヤスヤ寝ている。

疲れてるんだな〜とそのまま寝かせておいて、私は久しぶりの晴れ間に洗濯をする事にした。

ママと朝のチャイを飲んでから、溜まった洗濯物をどんどん洗っていく。

最近、右手の親指に洗濯ダコが出来た。

絞るときにそこに力が入るので、何度も絞っているうちにタコになったらしい。

そういえば小学生の頃に右手の中指に出来た大きなペンダコは、今や見る影もない。

洗濯ダコも洗濯機を使うようになったら消えるのだろうか?

 

10枚以上のマサイの服を洗濯し、木と木の間に張り巡らした洗濯ロープに布を干していく。

風が強く吹いていてすぐに乾きそうだ。

全部干し終わった頃に大工さんが雨樋の修理に来た。

大工さんが来たと同時にロマも起きて来た。

「おはよう、元気?」

「うん。元気。」

そう言ってトイレに消えていった。

 

マサイは誕生日を祝う習慣はない。

産まれた時にお祝いして、その後は誕生日祝いはしない。おばあちゃんやママは自分の誕生日を知らないと思う。

妹達の誕生日もいつも通りの日常として過ぎていく。

なので、ロマが私の誕生日を祝わなくてもそれは普通のことだ。

今日誕生日なんだよ!とか言うと強制的に祝わせる感じになりかねない。それは避けたい。

 

そのまま普通にお昼ご飯を食べて、他愛もない会話をする。

「この野菜炒めどうやって作ったの?」

「油敷いてにんにく炒めてから野菜入れて塩で炒めたんだよ。」

「へー美味しいね。」

いつも通りの会話。

でも何か違和感を感じたらしく

「ねえ、どうしたの?なんか元気ない?」

「そう?普通だよ。」

「そうかなぁ…」

こういう時のロマの勘は鋭い。

 

数日前からやたらと蕁麻疹が出るので村の診療所に連れていってもらった。

「あらー結構広範囲に出てるね。注射しようか。」

ちょうど診療所に着いた頃、左の膝から脹脛にかけて膨疹が出ていた。

私は軟膏か内服薬を想像していたので、注射と聞いて一瞬で表情が変わった。

「大丈夫です、そんな大したことないんで、ほらドクターがカルテ書いてる間に消えてきてるから!ほら!!」

注射されたくなくて必死に訴える患者。

それを見て大笑いするロマ。

笑いを堪えているドクター。

私の訴えと比例して蕁麻疹は消えていったので、注射は打たなくて済んだ。

ドクターがカルテを記載しながら、私の名前、年齢を聞く。

「42歳です。」

「22歳?」

「42です。」

「?!!」

私を見て、ロマを見てスワヒリ語で何か言っている。

「みんなタタの年齢聞くと嘘だ!って言うんだよね。」

アジア人若く見えるあるある。

そう、今日で42歳になったんですと心の中で独り言を呟き診察を終えた。

 

家に戻ると、ロマがどこかに行く用意を始めた。

「さっきサッカーに誘われて、最近全然運動してなかったから行ってくるね!」

おおおう。

今日は一緒に過ごしたいんだよ〜。

意を決して言ってみた。

「今日、何の日か知ってる?」

ロマの目がみるみる見開いて1.5倍くらいになった。

「あ!!!!モモイちゃん、今日誕生日…!!」

どうやら思い出したらしい。

「お誕生日おめでとうモモイちゃん!!」

「ありがとう。出来たら一緒に過ごしたいんだけど…」

「行かない!どこにも行かない!!一緒に過ごしたい。わああああチーパーブレイン!!昨日まで覚えてたのに!だから今日ずーっと何か引っかかってたのか!」

時はすでに17時、朝から何か違和感を感じていたらしい。

牛の世話に行ってくるねとそのまま何処かに行って、夕ご飯の時間になってもロマは帰ってこなかった。

牛はとうの昔にみんな帰ってきて、囲いの中に居るのに一体どこに行ったんだろう?

22時になっても帰ってこなかったので、諦めてベッドに入ってうとうとしていると帰って来た。

「モモイちゃん!起きて、お願い!」

 

私は眠い目をこすり、ゾンビのようにベッドから離床してリビングに向かった。

するとリビングにはママとノバーロン(従姉妹)、そして知らないマサイの戦士がいた。

どういう状況?

「お誕生日おめでとうモモイちゃん!」

「タタお誕生日おめでとう!」

テーブルを見ると真ん中に大きなケーキが置いてある。

「ありがとう、もしかしてこれを買いに行ってたの?」

「遅くなってごめんね、隣町まで買いに行って、帰りにバイク壊れちゃって友達のバイクで帰って来たんだ。」

 

どうやら数日前に隣町に行った時、ケーキをオーダーしていたらしい。

隣町にケーキ屋さんがあるなんて知らなかった。

立派なホールケーキ、あの凸凹道をバイクで手に持って運んで来てくれたかと思うとどんなプレゼントより嬉しい。

 

みんなに見守られてケーキカットをし、ロマが私に食べさせてくれる。

「長生きしますように。」

甘いバターケーキは口の中で溶けていった。

そのあとママとノバーロンにもお互い食べさせあって、最後はハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。

 

「ごめんね、誕生日忘れてて。昨日まで覚えてたのに本当にごめん。朝からお祝いしたかったなぁ。」

みんなが帰ったあと、まだ反省しているロマ。

「ケーキまで用意してくれて、こんな嬉しい誕生日はないよ。マサイは誕生日祝いしないのに、ありがとうね。」

「ムズング(外国人)がどうやって誕生日お祝いするか調べたんだよ。バレンタインもそう、分からなかったから調べた。」

「どうやって調べたの?」

Google!内緒だよ!」

そう言って笑うロマが隣に居てくれるだけで充分。

マサイ村でとっても素敵で幸せな誕生日を過ごす事ができた。

42年前の今日、この世に送り出してくれた両親に感謝して眠りについた。