ママが私を見て
「タタ、ボンゲサーナ」と嬉しそうに笑う。
妹たちも
「タタ、ボンゲ。ミミ シオ ボンゲ(私はボンゲではない)」
自分たちの足や腕を私と比較して嬉しそうにしている。
「ボンゲ」とは「太っている」のスワヒリ語だ。
最初は「あらま、何にもしなさすぎて太ったのかしら?」と思っていた。
(おそらく私は日本人の平均的な体格だと思う。)
ロマに相談してみた。
「太ったかなあ?」
「タタ全然太ってないよ。」
「ママと妹たちが『ボンゲ』っていうから気になって。」
「マサイの女性たちはボンゲの方がいいんだよ。痩せると『ご飯が足りてない!!もっと食べさせないと!』って慌てるから。褒めてるんだよ。」
確かに。
ママはいつもカリカリのマグダレナ(妹⑤)を心配している。
「あの子また痩せちゃってね。朝ごはんは牛乳しか飲まないし、学校行ってる間は何も食べられないでしょ?夕方6時くらいに帰ってきて少し食べて、夜ご飯(20時)はほとんど何も食べないから。困ったわ。」
学校は給食がない、そしてお弁当の概念もないので朝7時に家を出て夕方6時に帰ってくるまで何も食べず炎天下の中往復2時間の道のりを歩いていくのだ。
そりゃ痩せるわ。
「私も朝はチャイだけなんだけどね、なんでボンゲになるかな?」
「タタはお昼ご飯食べてるでしょ?」
大笑いしているママ。
病気のため一時的に家を離れているモニカ(妹③)も元々痩せているが、先日出会った時に撮った写真をママに見せると
「モニカ タササナレン」
と眉をしかめていた。
タササはマサイ語で痩せているなので、やはり痩せを気にしているようだ。
英語留学でフィジーに4ヶ月住んでいた時も、私の2倍はあるホストマザーがお世話してくれていたのだが
「こんなに痩せてるのに!もっと食べないと!!」
毎日キャッサバとダロイモを食べまくり、揚げ物もいっぱい食べてお腹いっぱいの日々。
夜ご飯を食べ終わった後、近所のママが遊びにきて夜のティータイム。
近所のママは冗談抜きで私の3倍はあったように思う。
今までに見たことのないサイズのマグカップになみなみとお茶を入れてくれて、そこに砂糖を5杯くらい入れてくれる。
おそらく1L弱はあるであろう巨大マグカップに注がれた甘〜いお茶と共に、でっかいパンをいただく。(夕食もたらふく食べたのに)
私はみるみるうちに巨大化し、ママはとても嬉しそうだった。
フィジーママ曰く、太ってる方が魅力的らしい。
ママの愛情を一身に受け、私は丸々と太ってそのままオーストラリアにワーホリに行った。
そこで一緒に住んでたニュージランド人のおばあちゃんにも
「こんなに痩せてるのに何をダイエットしたいの?!タタ消えちゃうわよ!」
それを真に受けた結果さらに丸くなり、おそらく10Kg以上増量して帰国したのであった。
おばあちゃんは私の2倍はあろうワガママボディにエメラルドグリーンのビキニを纏って颯爽とビーチに日光浴に出掛けるのが日課だった。
その姿はとても美しかったので、私も還暦を過ぎてもエメラルドグリーンのビキニを着てビーチに行こうと誓った。
その後日本に帰ってから日本食を食べているうちに体型は勝手に戻ったので、食生活って大事なんだなと身をもって実感した。
フィジーはふくよかを美しいと思っていて、オーストラリアはそもそも他人の体型なんか気にしてなくて、マサイはふくよかが良いと思っている。
日本は痩せ信仰が行きすぎてると思う、見た目もすごく気にするし大変。
それこそ思春期の頃は「鼻が〜」「口が〜」と俯いていたが、今ならその当時の自分に言ってあげられる。
「誰も私の顔に注目なんてしていない。」
そしてここタンザニアでは「タタは美人だねえ」と言ってもらえるので、所変われば評価も変わる。
国によって美の基準は色々、痩せすぎも太り過ぎも健康には良くないと思うので中肉中背体型をキープしたい。
ふくらはぎが私の腕くらいしかないマグダレナ