うちのバーにはスタッフが2人いる。
1人はスワヒリの男の子ムペンバ、まだ10代後半だ。
もう1人は20代前半の女の子でイマニという。
主にカウンターでお客さんの相手をするのがイマニだが、出会って2ヶ月、私は彼女が笑ったところを見た事がない。
「イマニいっつもしかめっつらで、メンチ切るように私を見て『シカモー』って言ってくれるけど、あれ怒ってるのかな?」(シカモーは目上の人に対するスワヒリ語の挨拶)
「いや、全方向にあれだから大丈夫、怒ってない。俺も一回しか笑ったとこ見た事ないし。カウンターにいるお客さん全員が涙が出るくらい笑った時にほんの一瞬笑ったのを見逃さなかった。それくらい笑わないよ。」
ある日、バブ(おじいちゃん)が手持ちのお金が無くてバーに借りに来た時、ロマは不在でイマニしかいなかった。
いつも通りメンチ切ってるイマニに恐れをなしたバブは「お金貸して」って言えなくて退散した。
「あの子どこのtribe??何でいっつも怒ってるの?」
後にバブはロマにそう言ったらしい。
バブをも退けるイマニの眼光。
しかし彼女はよく働く。
ほとんど休みもなく、ほぼ住み込みで朝から晩、時々朝まで働いている。
うちの安月給であんなに働いてくれるなんて、とても感謝している。
ムペンバはニコニコしてよく働いてくれるけど、未収が多すぎる。
もはや40万シリング(25000円)くらい未収があるのに、一向に回収出来ていない。
私たちが日本に行って留守にしている間、頑張って働いてくれていたので中古のスマホを買ってあげたのだが、そのスマホ代より未収が多い。
ツケで飲もうとするお客さんもお客さんだが、未収を回収しようとしないムペンバにロマが腹を立てて、スマホを2日間没収した事があるが、今も未収額は変わらない。
その点イマニは「お金がない人にはお酒売りません。」の一点張りなので助かる。
先日、ローズ(妹①)と一緒にマーケットに買い物に行った。
帰りの迎えを待っている時に、目の前をイマニが通りがかったので呼んでみた。
「イマニ!元気?」
私に気がついた彼女は
「シカモー」
とこっちに寄ってきてくれた。
一瞬、少し笑ったような気がしたが近くに来たイマニはいつも通りだった。
どうやら未収の客を探して、村を歩いているようだ。
この暑いのに、昼間からありがとうねと思って5000シリング(300円)あげた。
「チャクラチェマ(これでご飯食べて)」
するとイマニが笑ったのだ。
ほんの一瞬、ニコッと笑ってすぐに元のイマニに戻ってしまった。
「アサンテ(ありがとう)」
そう言って彼女はまた未収の客を探して、雑踏の中に消えていった。
「歯あった?」
ロマの第一声はそれだった。
「いやーあまりに口を開かないから、歯あるんかなと思って。」
「あったと思うけど、笑った事が衝撃的で覚えてないなぁ。」
イマニが笑った事が我が家の一大ニュースになっている事を、彼女はまだ知らない。
バーを売却する段取りは着々と進んでいる。
イマニはもう少しでうちのスタッフじゃなくなるけど、いつかまた私たちがお店をする時にはスタッフで来てくれたら良いなと思う。
その時にはちゃんとした休日と、今より良いお給料を払えるように私たちも努力しよう。
イマニがもっと笑ってくれますように。
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