マサイ村の上空を見上げると、時々飛行機が飛んでいる。
小さい頃に遥か頭上を飛ぶ飛行機を見つけては「あれに乗ったら遠くに行けるんだなあ」と漠然と思っていた。
今やこんなにも遠くに来てしまった、飛行機ってすごい。
夕方、ママと一緒にチャイを飲みながら飛んでいく飛行機を見ていたら、ママが飛行機について疑問に思っていることを聞いてくれた。
「タタとロマが日本に帰った時って、パイロットと三人で帰ったの?」
「バイクぐらいの大きさ?」
「着くまでご飯も食べられないって大変よね。」
ママは飛行機について何も知らない。
近くで飛行機を見たこともないし、テレビもスマホもなかったから情報を得る機会もない。
ママの想像の中の飛行機はバイクの三人乗りくらいの感覚なのだ。
「ママ、飛行機ってすごく大きいんだよ。私たちが日本に行った便は300人近く乗ってたんじゃないかな。もっと大きいのは500人乗れるんだよ。」
ママの大きな目が、2倍くらいに見開かれている。
「どのくらいの大きさなの?」
「えーっとね、こっからあそこくらいまでの大きさだよ。」
広大な庭を指さして、庭の端から端まであると説明すると小さな叫び声が聞こえた。
後ろを見るとジェニファーとマグダレナ(妹④⑤)がびっくりしている。
もちろん妹たちも飛行機なんて見たことがないし、遠くに見える豆粒くらいの飛行機がそんなに大きいなんて知る由もない。
「でも、そんなに飛行機が大きくても揺れがすごくてご飯なんて食べられないでしょ?」
ママがバンギャ並みに揺れている。
かつてDIR EN GREYが好きだった私から見ても、痺れるくらいのヘドバンだ。確かにそれではご飯は食べられない。
「ううん、ほとんど揺れないんだよ。ご飯も食べられるよ。」
前回飛行機に乗った時の動画を見せるとママは驚いて何度もその動画を見ていた。
「飛行機ってそんなに大きくていっぱい人が乗ってて重いのに、どうやって浮かんでるの?」
おぉ!難しい質問!!
何回も飛行機に乗ってるけど、未だに私もわからない。
ベルヌーイの定理???いやさっぱりわからない。
なんであんな鉄の塊が空を飛べるのか…私の頭では理解もできないし解説できない。
「わからない…」
「神のご加護で飛んでるのね。」
新しい発見!そうよね、そうじゃなきゃあんな重い物体が空を飛べるわけないよね!と力技で納得してもらい飛んでいく飛行機を眺めていた。
初めて飛行機に乗ったのは13歳の夏、北海道に向かって研修旅行に行った時だった。
当時の私も飛行機を初めて間近で見た時の驚きと感動は今も覚えているし、離陸する時のフワッとする感じがなんともいえなくて「また一つ新たな体験ができた」と嬉しかった。
あれから一体何回飛行機に乗ったのだろう、数えとけばよかった。
いつかママを飛行機に乗せて一緒に旅行したいなと、新たな目標をこっそり胸に抱いたのだった。